原子力施設の経年劣化等を考慮した火災影響評価手法の整備に関する研究(令和7年度~令和10年度)
研究概要
研究課題
火災は共通原因故障を引き起こす起因事象の中でも重要な事象の一つであることから、様々な火災事象(火災起因の事象も含む。)について知見を拡充して必要に応じて対策を講じ、リスク低減を図ることが求められています。今後、原子力施設の長期運転が想定される中で、電気・計装設備等の経年劣化に関する知見を拡充すること、また、これらの知見も踏まえて火災影響評価手法を高度化することが重要な研究課題となっています。
研究項目
本プロジェクトは、
(1)実機材料を活用した電気・計装設備の経年劣化評価手法の高度化、(2)火災に起因する電気ケーブルの短絡・地絡・ホットショート(注1)への備えとして電気ケーブルの熱劣化評価、(3)様々な火災事象に対する火災影響評価手法の整備に関する研究を行います。
注1(ホットショート):火災による熱の影響で電気ケーブル間の絶縁材が破壊され短絡し、異なる電気ケーブル間が電気的に接続される事象。
研究内容
- (1)では、原子力発電所で長期間使用された電気・計装設備の実機材料を活用して劣化状態の分析等を進めるとともに、事故時環境における絶縁性能に関する知見を蓄積することで、電気・計装設備の経年劣化評価手法の高度化を図ります。
- (2)では、火災時の熱影響により電気ケーブルの絶縁抵抗が低下するという現象を踏まえ、図1に示すような原子力施設内における火災源近傍に敷設されている電気ケーブルへの熱影響を模擬した熱劣化試験を行い、電気ケーブルの絶縁材料の種類や経年劣化の有無が、損傷や絶縁抵抗の低下に与える影響を調べます。また、長期間使用することに伴う経年劣化による電気ケーブルの難燃性(注2)への影響を調べます。
注2(難燃性):火災により着火しにくく、著しい燃焼をせず、加熱源を除去した場合にその燃焼部が広がらない性質。
図1 火災によって加熱されるケーブルの例(左側)及びケーブル熱劣化試験の一例(右側)
(3)では、様々な可燃物の火災試験データ等によって、火災解析コードの妥当性確認を行って知見を蓄積することで、火災影響評価手法等をより信頼性の高いものにします。
成果の活用先
これらの研究成果は、火災防護に係る審査基準や影響評価ガイド等(注3)の見直しの要否検討に必要な知見として活用されるとともに、原子力発電所の長期施設管理計画の認可申請の審査、火災防護に係る適合性審査及び検査において判断根拠等として活用されます。
注3(火災防護に係る審査基準や影響評価ガイド等):具体的には、実用発電用原子炉及びその附属施設の火災防護に係る審査基準、原子力発電所の内部火災影響評価ガイド、原子力発電所の外部火災影響評価ガイド及び高エネルギーアーク損傷(HEAF: High Energy Arcing Faults)に係る電気盤の設計に関する審査ガイド。
上記のより詳しい内容については、研究計画をご覧ください。
研究計画
準備中
評価
安全研究に係る事前評価結果【PDF:13MB】
(1、4~5、31~33ページ)
安全研究成果報告
プロジェクト終了後に掲載予定