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田中委員長職員訓示(福島第一原子力事故から3年にあたって)

2014年3月11日
原子力規制委員会委員長 田中俊一

本日3月11日、東京電力・福島原子力発電所事故から、今日で3年になります。仕事に追いかけられ、時間が流れて行く毎日ですが、事故を契機として発足した原子力規制委員会・規制庁は、事故から遠ざかってはなりません。委員会の発足からは、まもなく1年半になります。昨年4月には文部科学省から放射性同位元素等規制法にかかる業務が移管され、先日は、原子力安全基盤機構、JNESとの統合もありました。私たちの責任はますます大きくなり、その分、国民・社会からの期待も増していると言えます。事故から3年という節目にあたり、「事故によって地に墜ちた、原子力規制に対する信頼を回復する」という課題への取り組みを振り返り、私たちの使命について再確認してみたいと思います。

私たちの使命の第一は、東京電力・福島第一原子力発電所の廃止措置をできるだけ速やかに進めること、そして事故による住民の気持ちに寄り添うことです。昨年行った「帰還に向けた安全・安心検討チーム」では、事故から時間が経つにつれて、被災者の中に事故直後とはまた違う苦悩が生まれていることが明らかになりました。その苦悩や懸念、不安に応えるための提案が出され、昨年暮れには、国の原子力災害対策本部でその方針が決定されました。私は最近何度か、個人的な用事で福島に帰ったのですが、地元の人と言葉を交わすたびに、苦悩の深さ、複雑さを知り、原子力災害の罪の大きさを改めて感じました。今年は、国としても取り組みの真価が問われる年になると思います。

今、サイトのすぐ外に住んでいる人はいませんが、それは避難を余儀なくされているからだということを決して忘れてはいけません。いつか帰還しようという希望を持っている人にとっても、別の場所で新しい生活をする決意をした人にとっても、福島はふるさとです。現在は、遠く離れた場所にいて、たとえ忘れようとしていても、福島第一原子力発電所でトラブルが起きたという知らせを聞く度、被災者の心に重い雲がかかるという事実を、深刻に認識する必要があります。そのような被災者の思いをよくよく胸に刻みながら、私たちは厳しい現実と対峙しなければなりません。この先、何一つトラブルなく廃炉が完了することは不可能であると、これまでも申し上げてきました。大変歯がゆいことですが、福島第一原子力発電所の状況は、様々なトラブルを想定しなければならない状態にあります。

だからこそ、福島第一原子力発電所の廃止作業の「安定確保」という戦いは、どんなに想定しても想定しきれないリスクを相手に、それを顕在化させない、という根気の要る戦いなのです。そこには、高い専門性と気概が求められます。

いま、原子力規制庁の福島事務所には第一・第二あわせて17名の職員がおり、そのうち10名が第一原発を担当しています。我々の仲間として最前線で事故サイトと向き合う検査官の声を、みなさんに直接聞いて欲しいと思い、今日は代表者に来てもらいました。検査官、お願いします。

(検査官より挨拶)
私たちが勤務する福島第一規制事務所は、Jビレッジにあり、1Fサイトにおいて、24時間交代で事業者が実施する保安活動や、廃炉に向けた取り組みの状況を確認する業務を行っています。今、1Fでは毎日5000人以上の作業員が、廃炉に向けた工事に携わり、サイトの至るところで工事が行われている状態です。どの検査官もサイト内全体を把握できるよう務めていますが、さらに注意を集中すべく、重要な機器や工事に対しては特に担当者を決め、進捗状況を確認しています。サイト内は以前より、片付いてきましたが、しかしそれでもまだ線量が低いとは言えません。私たち検査官も必要以上の被ばくをしないよう心がけ、巡視等をする際も最新の線量状況を把握し、巡視や現場確認ルートを決めています。昨年11月には、4号機燃料取り出しが始まりました。この作業について、一部紹介したいと思います。
11月18日、構内輸送容器を4号機使用済み燃料プールへ持ち込むにあたり、実施確認を行いました。
この写真は容器を移動し、プール内に入れるところを保安検査官が確認したときの模様です。この写真は、燃料取扱機上に検査官が乗り、燃料ラックからの吊り上げ状況を確認している様子です。この写真は、輸送容器に燃料を充填している状況を検査官が確認している様子です。11月20日には、4号機の使用済み燃料プールから輸送容器のつり上げが行われ、共用プールへの搬出準備が行われました。写真は、つり上げられた輸送容器から養生カバーが取り外されたところです。11月23日、4号機原子炉建屋から輸送容器を共用プールへ移す作業が行われました。写真は、4号機の搬入口において輸送容器を専用の台車に乗せているところです。これまでにこの一連のサイクルは22回繰り返されてきました。作業は、今年いっぱい続きます。慣れによる気の緩みが大きなミスに繋がらないようにしなければなりません。今、4号機の燃料取り出しの現場では、本庁からの指示により、作業環境の改善が進められています。このような取り組みと協調しつつ、残り1000体を超える使用済み燃料の移動作業について、集中力を途切れさせることなく、安全に作業が進められるよう監視していきたいと考えています。今年も昨年に続き、汚染水の漏えいが発生しました。プラントの監視をする立場として非常に責任を感じています。ひとたびトラブルにまで至ると、現場で状況を押さえ込むことは非常に困難です。私は、規制の基本はトラブルの未然防止、予防にあると考えます。1Fは、何が起きるか全てを予測できる状態にはありません。そこで私たちは、小さな端緒を見逃さず、状況を迅速かつ正確に報告することで、不確実性を下げるよう心がけています。さらに、予防的な規制をするためには、長期的な見通しを持つことも重要です。1Fについて、廃炉のためのロードマップがありますが、私たち規制側にも工程表のような概念が必要だと感じています。
汚染水の問題を含め、「サイトをこう安定させたい」という目標に、いかにして近づいていくか、という道筋です。先月、「敷地境界で廃炉作業によって追加的に生じる放出による影響を年1ミリシーベルト以下」にするための段階的な規制要求が決まりました。これをはじめとして、特定原子力施設の実施計画を充実させているところなので、現場の視点を活かしながら、より実効性のあるものにしていきたいと考えます。本庁からの指示、報道など、自分の仕事がいかに責任あるものか、意識することが多い職場です。これからも困難な現場であることは変わりませんが、私たちが守っているのは、サイトではなく人だという気持ちを持ち、使命を果たして行きたいと思います。以上です。

検査官、ありがとうございました。

今日ここに集まっている規制委員のみなさん、規制庁職員のみなさん。それぞれが重要な責務を負って日々の仕事に全力を傾注(けいちゅう)しています。サイトに立ち入ることのない業務を担当している人もいます。しかし、福島第一原子力発電所の状況は私たち全員の原点であり、等しく責任を分担しているのだということをいま再確認していただけたと思います。

検査官の話にもあった通り、リスクの顕在化を防ぐ予防的な規制をするためには、規制委員会と規制庁全体の連携がきわめて重要です。今日は、福島第一原発の状況を検査官に報告していただきましたが、予防的な規制という課題は、全ての現場に共通しています。

私は規制委員長として重い責任を負い、最大限の努力をする覚悟です。しかしこの課題は、私の覚悟だけで解決するような簡単なことではありません。組織の力は、現場をどれだけ信用できるかで決まります。全ての会議が公開される現状は、これまで以上に行政官の力量が問われる環境であり、みなさんの負担は増えたかもしれません。しかし、適合性会合を見ていると、率直に質問をぶつけ、必要な要求をする姿勢を規制委員会と規制庁の一人一人が身につけつつあることが分かり、大変嬉しく思っています。

これからも良い意味での緊張感を保ち、個人でも庁内でも、事業者と向き合う場合でも、常に「事故が起こるリスク」を問いかける姿勢と共に、規制行政官としての矜持を堅持し続けて欲しいと思います。どんな仕事をする時も、必ず3年前の事故に立ち返って考えるよう、習慣にすることが大切です。それこそが「安全文化」の基本であるからです。節目の今日。被災者に思いを寄せ、現場を知り、安全文化の意味を改めて確認し、さらなる挑戦を誓い合いましょう。

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