原子力災害発生時の防護措置の考え方
平成28年3月16日
原子力規制委員会
1.基本的な考え方
原子力災害発生時における防護措置の基本的な考え方は、重篤な確定的影響を回避するとともに、確率的影響のリスクを合理的に達成可能な限り低く保つことである。
このためには、放射性物質の吸入による内部被ばくをできる限り低く抑えることが重要である。施設の近くでは、プルームや沈着核種からの高線量の外部被ばくも避けなければならない。
一方で、東京電力福島第一原子力発電所事故の教訓から、避難行動には、それによって避けられる放射線影響と比較しても無視できない健康影響を、特に高齢者や傷病者等の要配慮者にもたらす可能性が高い。また、避難渋滞やパニックに伴う事故等も考えると、避難行動には常に危険が伴うことを認識すべきである。
PAZ圏内のような施設の近くの住民は、プルームによる内部被ばくだけではなく、プルームや沈着核種からの高線量の外部被ばくを含めた影響を避けるため、放射性物質が放出される前から予防的に避難することを基本として考えるべきである。ただし、この場合であっても、避難行動に伴う健康影響を勘案して、特に高齢者や傷病者等の要配慮者については、近傍の遮へい効果や気密性が高いコンクリート建屋の中で屋内退避を行うことが有効である。
一方で、比較的施設から距離の離れたUPZ圏内においては、吸入による内部被ばくのリスクをできる限り低く抑え、避難行動による危険を避けるためにも、まずは屋内退避をとることを基本とすべきである。
屋内退避により、吸入による内部被ばくを、木造家屋においては四分の一程度、気密性の高いコンクリート建屋のような施設においては二十分の一程度に抑えることができる。
2.予測に基づき方向を示唆して避難することの弊害
原子力災害発生時において、プルームの放出時期を事前に予測することは不可能である。
事前に推定した放出源情報による場合であれ、単位量放出を仮定した場合であれ、そこから得られた拡散計算の結果に信頼性はない。
原子力災害発生時に、予測に基づいて特定のプルームの方向を示すことは、かえって避難行動を混乱させ、被ばくの危険性を増大させることとなる。
さらに、避難行動中に、避難先や避難経路を状況の変化に応じて変えるということは不可能であり、避難自体を非常に困難なものにする。
したがって、放射性物質の放出前の避難については、同心円的に事前に決められた方法で行うべきである。