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山中委員長職員訓示(東京電力・福島第一原子力発電所の事故から13年にあたって)

令和6年03月11日
原子力規制委員会委員長 山中 伸介

東日本大震災、そして東京電力・福島第一原子力発電所事故の発生から13年が経ちました。
日本では、この三十年間、東日本大震災を始め、多くの地震や津波が起こりました。今年の1月1日にも能登半島地震が起き、多くの方がお亡くなりになり、未だに多数の方が避難を余儀なくされております。哀悼の意を表しますとともに、お見舞いを申し上げたいと思います。
今回の地震のあった石川県には、志賀原子力発電所があります。長期停止中で、使用済み燃料プールの冷却にも異常が無く、地震直後から発電所の安全性は確保された状態が継続されています。特に、担当の職員、現地検査官は、引き続きその状態が維持されていることを確認してください。

日本において、地震や津波を始め、風水害など様々な自然災害は避けることができません。どのような自然災害に対しても、二度と東京電力福島第一原子力発電所のような事故を起こしてはならないということを改めて強く思いました。勿論「福島を決して忘れない」という私の気持ちは、揺らいだことはありません。職員の皆さんも、東京電力福島第一原子力発電所事故の教訓と反省は忘れられてはいないと信じています。

さて、職員の皆さんは、この1年間、どのような想いで、日々、仕事に携わってこられたでしょうか。今日は、皆さんと事故への想いを共にし、東日本大震災のような自然災害への原子力施設の備えや私達がなすべき取り組みを考えながら、自分の今について振り返っていただきたいと思います。
職員には、他省庁から異動してこられた方、企業などに在籍され転職された方、新規採用で入庁された方もかなり増えてきていますが、あのような事故を二度と起こさないという気持ちは皆、同じだと思います。ただ、日々の業務を進めていくうちに、熱い気持ちが少しずつ冷めていってはいないだろうか、少し心配しております。変化や改善を恐れてはいないでしょうか。もし、そうであるならば、今一度、気持ちを奮い立たせて頂ければと思います。

そして、職員として、それぞれが学ばれたことを後輩に語り、伝えていって頂ければと思います。私が教育者として信条にしてきた言葉があります。
学びとは、真理(まこと)を胸に刻むこと、
教えとは、希望を人に語ること。
ルイ・アラゴンの詩の一節です。いろいろな立場、分野の職員が居られると思いますが、先輩から、あるいはご自身で仕事を学ばれ、業務を遂行されてきたと思います。学ばれた知識や経験を後輩に教えてあげて下さい。教えられて学ぶ、教えて学ぶ。教えてみて、初めて、自身の能力や技量を自ら測れるものですし、自身の無知を知ることにもなり、明日への学びに繋がっていくと思います。そのような、一人一人の活動が原子力規制委員会全体の活力に繋がると思いますし、理想の原子力規制に結びついて行けばと期待しています。

あの事故から13年の歳月が経ちました。福島県の復興・再生という観点では、避難指示区域の縮小、特定復興再生拠点区域の策定などの進展もあり、他にも多くの方々の努力が成果を実らせていることと思います。
一方で、東京電力福島第一原子力発電所の廃炉についていえば、まだまだ道半ばです。
 私自身、29年前に阪神淡路大震災を被災し、被災者としての暮らしを経験したのですが、当時、多くの方が亡くなり、またその悲しみを抱えて暮らしている方々も少なくはないと思います。震災当時、10年では、いろいろなものが元通りになるのは到底無理だと思っておりましたが、かなりの早さで復興していく様子を目の当たりにいたしました。兵庫や大阪の復興のスピードと福島のそれを比較すると、やはり、原子力事故の影響の大きさや罪深さを感じざるを得ません。
私自身、今後福島の復興にどのように貢献していけるかについて、10年後の私自身が何を感じ、どう生きているのか、未来の自分を想像しながら考えております。教育者として、その原点に立ち返って考えてみると、やはり人を育てるということ、若い技術者、科学者を育て、原子力の安全に役に立つ成果に繋げていくということ。そうしたことが、福島の復興、未来の役に立つのではないかと思っています。

先程、今の自分について振り返って頂きたいとお願いをいたしましたが、今日は是非もう一つお願いしたいことがございます。それは、10年後の自分について考えてみて欲しいということでございます。
昨年、原子力は、いくつもの世代を超えていくような、本当に長いスパンで考えなければならない技術だというお話をいたしました。10年後の自分を考えて頂き、どのように前の世代から知識や経験を受け継ぎ、どのように将来に、それを引き継いでいくのか、想いをはせて頂きたいと思います。将来の私達が、原子力という技術に関する安全規制にどのように関わっているのか、この機会に、是非、想像して頂ければと思います。将来の私達は、今の私達の考えと行動が創るものです。最上のものは、過去ではなく、未来にあると信じています。

原子力は賛否が分かれる分野です。職員の皆さんはもとよりご家族も含めて大変ご苦労も多いと思います。しかしながら、私達は、あらゆるものから独立で中立に科学的、技術的に判断し、原子力の安全向上のために規制に携わることができるのです。私達が純粋に科学的・技術的に考え判断でき、その価値観を共有できる組織で沢山の仲間とともに仕事ができるということは、非常に素晴らしいことだと思います。

規制に直接関わる私達には、原子力の安全性向上に様々な立場から励まなければなりません。原子力施設の審査、検査、研究や放射線防護に携わる職員は勿論のこと、人事、会計、総務、法務など他のすべての職員にも、常に一人一人を尊重し、グループとしてしなやかに適応する能力を育んで頂きたいと思います。

あのような事故は二度と起こさない、原子力に100パーセントの安全は無いということを肝に銘じながら、常に科学技術に基づいた判断をしてください。「原子力の確かな規制を通じて、人と環境を守る」という初心を今一度思い起こし、大きな視点で自分自身を見つめ直してください。変わることを恐れず、希望と理想を持ち続け歩み続けてください。

私達一人一人が、将来を見通し、人を想い、原子力規制委員会が常に活力ある組織として社会に貢献し国民から信頼されるよう努力して参りましょう。

以上、私の訓示といたします。
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